頭頸部外科のご案内

診療内容

 耳鼻咽喉科が診療している口腔、咽喉頭、耳、鼻、甲状腺、唾液腺(耳下腺や顎下腺)、頸部などの中で、主として腫瘍性疾患の診断、手術を行います。
具体的な病名としては、甲状腺腫瘍(甲状腺良性腫瘍、甲状腺癌)、唾液腺腫瘍(耳下腺腫瘍、顎下腺腫瘍)、頸部嚢胞性腫瘍(正中頸嚢胞、側頸嚢胞)、唾石、口腔腫瘍(舌良性腫瘍、舌癌、歯肉癌など)、咽喉頭腫瘍(咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、中咽頭癌、下咽頭癌など)、鼻腔腫瘍などが挙げられます。口腔、咽頭、鼻は、生体の入り口であり、外から様々な物質や細菌・ウイルスが侵入してきます。そのため炎症も多い部位なので、炎症によるリンパ節腫大や腫瘍なのか、手術が必要な腫瘍なのか診断する必要があります。
また腫瘍であれば良性か悪性かの診断も必要です。このような鑑別診断や治療方針の決定を行うために近隣の医療機関から当院に紹介受診される患者さんも多くおられます。
頭頸部外科の手術は会話、食事に影響しやすく人目に見える部位ということで患者さんは疑問や不安を抱えていることも少なくありません。頭頸部の癌は、肺癌、大腸癌などに比べれば罹患者数は少ないですが、頭頸部がん専門医も少なく(静岡県は10名)、詳しく相談できる施設も限られています。当科部長は静岡がんセンターに19年間在籍していたため頭頸部がんの治療経験が豊富で日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医、日本耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会専門医です。ご気軽にご相談頂ければと思います。
なお頭頸部癌の進行した症例では、手術で口腔や咽頭の組織を大きく切除せざるを得ない場合や、抗癌剤を併用しながら放射線治療を行う場合があります。このような症例は当院で診断した後に静岡がんセンター等に予約をとって紹介いたします。

日本耳鼻咽喉科学会ホームページより改変

甲状腺腫瘍(甲状腺良性腫瘍、甲状腺癌)

頸部のしこりで発見されることが多く、健康診断で指摘されることもあります。もし癌であっても、そのほとんどが手術をすれば大変治りやすい癌です。
エコーや細い針で細胞を採取して癌かどうか診断します。甲状腺腫などの良性腫瘍では頸部が大きく腫れていたり、また腫瘍のために頸部の違和感が強い、悪性の疑いがあるなどのときに手術を行います。手術の時は、声帯を動かす発声に関与する神経(反回神経)が甲状腺に接して深部に隠れており、この神経を傷つけないように術中にモニターしながら手術します。

耳下腺腫瘍

多くは耳の周囲のしこりでみつかります。良性の場合が70%程度です。
良性腫瘍でも多形腺腫の場合は悪性化する可能性がありますので、基本的に手術をお勧めしています。
耳下腺内には閉眼したり口唇や頬を動かす顔面神経が網の目状に走行しています。手術の際にはこの神経を術中にモニターし顔面神経へのダメージを最小限にします。また耳下腺手術では通常、耳の前から下にかけてS状皮膚切開を行いますが、傷が目立たないように皮膚切開をうなじ方向に行うこともあります(Facelift incision)。

頸部嚢胞性腫瘍(正中頸嚢胞、側頸嚢胞)

頸部に比較的柔らかい腫瘍を触れるようになります。胎生期に頸部の構造ができる過程で、袋状の遺残物が生じて、その内部に液体や酒粕様物質が貯留したものです。
頸部切開をして腫瘍を壊さないように丸ごと摘出します。腫瘍が下顎骨に近接している場合は下口唇を動かす神経である顔面神経下顎縁枝を損傷しないようにこの神経をモニターしながら手術します。頸部皮膚切開は頸部の横皺にあわせてなるべく目立たないようにします。
頸部嚢胞性腫瘍では腫瘤内の液体や泥状物質が感染し炎症をきたすと痛みや皮膚発赤を生じます。この炎症はいったんは抗生剤で軽快しますが、周囲と癒着してしまい手術のときに剥離が困難になります。すると皮膚切開が大きくなり周囲の神経が傷ついたり完全摘出が困難になったりします。感染をきたさないうちに摘出することが推奨されます。

唾石

多くは食事の時に顎下部の腫れや痛みを生じます。唾液を作る顎下腺の唾液排出管のどこかに結石が生じています。
多くは口腔内から唾石を摘出して完治します。稀ですが顎下腺内に結石が生じた場合は頸部皮膚切開をして顎下腺ごと結石を摘出せざるを得ない例があります。唾石の手術では唾液排出管と舌神経(舌の知覚神経)が近接しており舌のしびれが後遺症とならないように注意が必要です。

舌癌

口腔内の悪性腫瘍では舌癌が50~60%を占めます。多くの舌癌は舌の側面に歯や義歯が接触しておこります。
歯並びが悪い人や内側に傾いた歯がある人は要注意です。平均年齢は60歳前後ですが10~20歳台の若い人にもみられるので注意が必要です。
舌の同じところにできた口内炎が3週間以上治らない場合はすぐに耳鼻咽喉科や歯科の受診をお勧めします。治療は病変を切除しますが、もともと舌は会話や食事に必要な体積よりも十分に大きいので、舌全体の3分の1程度を切除しても困るような障害は残りません。早期に診断できれば手術で後遺症なく80~90%は治ります。

★当院医師の講演をご参照下さい。

(動画の4分30秒~22分40秒が舌癌の話です)

 ※口腔がんとは(疫学、治療、予防など)動画

  ↑静岡がんセンターへのリンク

喉頭腫瘍

● 声帯ポリープ・・・大きいものやがんとの鑑別が必要な場合は全身麻酔で病変を切除します。なるべく声が悪化しないように行います。

● 声帯白板症や声帯癌・・・中~高年の男性に多く、喫煙歴が大きく関与します。喫煙歴があって声がかれる、出しにくいなどの場合は耳鼻咽喉科を受診してください。多くは診断のために声帯からの組織採取が必要となります。咳反射で組織採取が難しい部位ですので、全身麻酔で検査を行うこともあります。

中咽頭癌

中咽頭癌は扁桃腺やその周囲、舌根などにできる癌です。
中咽頭癌の原因は、飲酒、喫煙によるものとHPV(ヒト乳頭腫ウイルス)によるものがあります。HPVによる中咽頭癌はここ10年程度で増加傾向にあり、本邦の中咽頭癌の約6割はHPVによるものです。
頸部リンパ節の無痛性のしこりで発見されることが多く、40歳台から高齢者までに見られます。
HPVによる中咽頭癌は比較的治りやすい癌であり治療法は手術や射線療法どちらでも根治可能です。しかし放射線療法は舌や咽の粘膜にも放射線があたるため、味覚障害や口腔乾燥、歯肉炎などの後遺症が少なからず起こります。手術や抗癌剤を受ける体力がある60歳くらいまでの方では、放射線を使わない治療法(抗癌剤と手術の組み合わせ)で後遺症を最小限にすることが可能です。

下咽頭癌

下咽頭は食事の通路で、食道の上で声帯の高さ付近にあります。
発癌に過量飲酒(アルコール量で毎日40g以上の飲酒)が関係しています。咽頭痛、頸部のしこりで発症することが多いです。早期発見できれば内視鏡で病変を切除するだけで後遺症なく治せます。最近では胃食道内視鏡検査で無症状の早期の下咽頭癌が発見されることも多くなりました。

慢性上咽頭炎による症状について(頸部リンパ節腫脹、偏頭痛、首こり、肩こり、咽頭違和感、慢性の咳や痰、後鼻漏、鼻閉、浮動感や立ちくらみなどのめまい、耳痛、全身倦怠感)

 

鼻腔の奥の突き当りには上咽頭があります。この部位にはリンパ組織があり鼻呼吸の際に細菌やウイルスなどの病原菌が付着し易い部位で免疫応答の役割があります。わかりやすい例ではコロナウイルスの感染検査で医療者が行う鼻咽頭ぬぐい液は上咽頭から検体採取をします。
また上咽頭には迷走神経と舌咽神経という重要な神経があります。よって上咽頭に慢性炎症があると多彩な症状を起こすことが知られています。しかし上咽頭自体に自覚症状が少ないこと、内視鏡所見では一見正常に見え綿棒で擦過してみないと炎症の存在が診断できないことから見逃されやすい疾患です。
またうがいでは洗い流せない部位でありセルフケアをしにくい部位です。当院では他の検査では原因不明であった、頸部リンパ節腫脹、偏頭痛、首こり、肩こり、咽頭違和感、慢性の咳や痰、後鼻漏、鼻閉、浮動感や立ちくらみなどのめまい、耳痛、全身倦怠感などに関して、慢性上咽頭炎と診断し、上咽頭炎を治療することで症状の軽快、消失が得られています。
また上記の症状に随伴していた、全身の筋肉が痛む線維筋痛症のような症状、掌蹠嚢疱症、脱毛症が治癒した例もあり、これは慢性上咽頭炎が病巣となって全身に影響を及ぼす病巣感染であったと考えられます。
またコロナウイルス感染後やコロナワクチン接種後のいわゆるアフターコロナの症状にも慢性上咽頭炎の治療効果がみられています。治療は上咽頭炎の部位を塩化亜鉛を浸ませた綿棒で週1~2回、合計7-8回程度、擦過します。この治療は1960年台からBスポット治療、最近ではEAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy、上咽頭擦過治療)と呼ばれ、歴史のある安全な治療法です。
またご自宅で上咽頭セルフケアの鼻咽腔洗浄も勧めています。慢性上咽頭炎は中学生から高齢者までみられます。治療の際には個人差があるものの痛みを伴いますが、長期の慢性症状から解放された方も多く、上記症状でお困りの方は一度慢性上咽頭炎があるか上咽頭の内視鏡検査を受けてみることをお勧めします。

手術執刀数:2016~2022年(他施設分を含む)

甲状腺腫瘍165例(悪性115、良性50)、耳下腺腫瘍56例(悪性12、良性44)、舌癌96例、咽頭癌92例、喉頭癌29例、歯肉癌53例、鼻副鼻腔癌24例など

診療時間・担当医表(耳鼻咽喉・頭頸部外科)

 日・祝
午前鬼塚 哲郎
関  伸二
近藤 統太
関  伸二
交 替 制
鬼塚 哲郎
関  伸二
阿部 桐士
関  伸二
交 替 制
交 替 制関  伸二
近藤 統太
阿部 桐士
【休診】
午後鬼塚 哲郎
近藤 統太
交 替 制鬼塚 哲郎
阿部 桐士
交 替 制鬼塚 哲郎
近藤 統太
阿部 桐士
【休診】【休診】

※火曜日の午前は、手術の為変更になる場合があります。

医師紹介

部長 鬼塚 哲郎(おにつか てつろう)

<専門分野>

頭頸部腫瘍、甲状腺腫瘍

<学会>

日本耳鼻咽喉科学会

<専門医・認定医>

耳鼻咽喉科専門医・指導医・代議員

医学博士

静岡がんセンター特別非常勤医師

フロアガイド

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2 耳鼻咽喉・頭頸部外科 7 中央検査室12 脳神経外科・外科・泌尿器科17 売店
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診療科目