当院は2022年4月よりスタッフ増員による診療の質向上のため専門外来を設置しました。
鼠径ヘルニア(そけいヘルニア)は、乳幼児の場合はほとんど先天的なものですが、成人の場合は加齢により身体の組織が弱くなることが原因で、特に40代以上の男性に多く起こる傾向があります。日本では鼡径ヘルニアに対し年間でおよそ15万件以上も手術が行われており、手術が必要な良性疾患のうち最も多い疾患となっています。
鼡径部(そけい部)にはお腹と外をつなぐ筒状の管(鼡径管)があり、男性では睾丸へ行く血管や精管が、女性では子宮を支える靱帯が通っています。加齢とともに筋膜が衰えてくると鼠径管の入り口が緩んで腹膜および臓器が脱出します。鼠径ヘルニア患者の80%以上が男性ですが、これは、鼠径管のサイズが女性より男性の方が大きいためと考えられています。症状は鼡径部のふくらみ、不快感、痛みなどで、初期のうちは圧迫することで還納されますが、放置すると大きくなって戻りにくくなることがあり、場合により緊急手術となります。
お腹に力を入れた時などに筋膜が緩んで出来た入り口の隙間から腹膜が出てくるようになり、次第に袋状に伸びて鼡径管内を通り脱出します。一度できた袋はなくならず、お腹に力を入れると腸など、お腹の中の組織が出てくるようになります。これを外鼡径ヘルニアといいます。
年齢を重ねて筋膜が緩んたり、急激な腹圧が集中した際にもともと筋膜が薄い鼠径部から腹膜が袋状に伸びて鼡径管内に脱出します。これを内鼡径ヘルニアといいます。
鼡径部の下の鼡径靱帯から大腿にいく血管の内側の大腿輪へ筋膜が弱くなって膨らみが発生するヘルニアを大腿ヘルニアといいます。腸などが脱出して緊急手術となるケースが多い病態です。
成人の鼡径ヘルニアの発生には、高齢化、肥満や職業が関係していることが指摘されており、腹圧のかかる製造業や立ち仕事に従事する人に多い傾向があります。また、便秘症の人、肥満の人、前立腺肥大の人、咳をよくする人など腹圧が高い方、妊婦もハイリスクです。
多忙のため我慢し受診ができない患者さん、「恥ずかしい病気」のイメージがいまだにあって受診を渋っている患者さんもかなり多いと推定されます。
当院での治療は手術当日朝に入院し手術を施行し、手術翌日に退院する1泊2日のスケジュールで治療を行っています。
どうぞお気軽にヘルニア外来までご連絡ください。
スタッフ一同お待ちしております。
外来診察:木曜日の午後 055-971-4133(代)